よくばりな恋


「翠?」

声をかけられて一瞬息が止まる。

ゆっくり顔をあげると、わたしが思い浮かべた人ではなかった。


「空くん・・・・・」



仕事中のあの人がここにいる訳ないのに。


「めっちゃ具合悪そうやな、大丈夫か?」
空くんの手が額に触れる。

「うわっ、ごっつい熱あるやん」
空くんが自分の着ていたジャケットをわたしに着せてくれる。

「翠、おんぶ」
空くんがわたしの前に背中を向けて屈む。

「いいよ、重いから。少し休んだら帰れる」

「何言ってんだか。今にも死にそうな顔してるクセに。ごちゃごちゃ言うてたらお姫様抱っこで帰んぞ」

言い返すのもしんどくなって、空くんに甘えることにした。今日、パンツで良かった・・・・・・・・・・。
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