キミが教えてくれたこと


起立、礼、と言う日直の合図で生徒たちが教室を出て行く


茉莉花は鞄をもって百合に話かけようとすると、担任に呼び止められた


「林、ちょっといいか?」

そう言って教室から出て人気のない階段まで誘導された


「バイトの時間は大丈夫か?」

『はい、今日は5限までだったので間に合います』


そうか、と笑顔で返すと担任はゴソゴソと一枚の紙を出した

それは先日行った進路についての簡単なアンケートだった

高校卒業後、就職か進学か。また、どういったところが希望かとざっくりした質問が書かれていた


「…これ、就職に丸がしてあるんだが、」

『はい、卒業後は就職しようと思っています』

その答えを聞いて担任は、んー、と頭をかいた


「お節介だとは思うんだけど、林2年の時の希望調査では進学希望だっただろ?まだテスト返却終わってないからほんとは言っちゃだめなんだけど、今回の中間もなかなかいい点数だしまぁご家庭の事情があるのもわかるんだが…」


担任は茉莉花の将来について考えていた

本当にしたいことがあるのに、事情があって出来ないということが少しでも軽減されるようにいろんな大学を調べたりしていた


「もしご家庭の事情で進学を諦めたなら、奨学金制度や教育ローンもあるしそれに…」


『先生』

茉莉花は担任の話を静止した

『ありがとうございます、そこまで考えて頂いて』

でも、と続ける


『以前とやりたいことが変わったので。就職希望が今の私の考えです』


そしてごめんなさい、と頭を下げた

担任はそれ以上何も言う事なく、残念そうな顔をしてわかったと頷いた


「引き止めて悪かった、帰るとこだったよな」

いえ…と返し、百合がまだ残っているか確認をしに担任と教室まで戻る

すると、そう言えば…と二人並んで教室に向かってる途中担任が何か思い出したように切り出した


「林、最近なんだか楽しそうだな」

『え?』

「表情が明るくなったと言うか…。たまに一人でニコニコしてる時とかあるだろ?」


教師というものは良くも悪くも生徒のことを良く見ている

きっとハルトと話しているところを見られてしまったのだろう

茉莉花は見られていたのかと恥ずかしさで顔が赤くなった


『いや、あの、別に!普通です!いつも通りです!!』

「そ、そうか?」

いつも冷静な茉莉花が自分の感情を露わにして否定する姿も、担任としてはとても新鮮だった

驚きはしたが、嬉しい気持ちの方が大きく笑顔で教室に入った



< 24 / 87 >

この作品をシェア

pagetop