私と二重人格の僕
【ヒロヤ】
なんだ、なんで僕で階段から二階を見上げてんだ?
…まぁいいか。
僕は、リビングを見渡し半分残してあるトーストに目がいった。
美味そう、そう思い齧る。
「あら、桜空まだ行ってなかったの?」
母親が2階から降りてきた。
「なにが?」
「あら、ヒロヤ。おはよう。」
母親はズバリ、僕だと当てるので「流石だなぁ。」と言った。
「声でわかるわよ。女の子の声だけど、低いわ。」
「へぇ〜。桜空のほうはどんな声してんだ?」
同じ僕でも、桜空の声は出せない気がした。
僕は僕でも、桜空は桜空だって思ってるからだ。
「ふふ、桜空は可愛らしい声をしてるわ。」
可愛らしい声か…「ふーん。」と素っ気なしに返したが、正直すごい気になった。
「聞きたいの?桜空の声。」
唐突な質問に僕は、「聞きたいよ。」と答えたがすぐに「同じ僕だからね。」と付け足した。
「桜空に声、録音してもらうわ。その代わり!朝練いってらっしゃい。」
「えぇ、めんどくさい。」
「めんどくさがりは本当に似てるわね。ったく....桜空のために行ってきてちょうだい。」
桜空のために、か。
僕自身に得はないが、声が聞けるという得がある。
「わかったよ。」
そう答えた瞬間、
フッと真っ暗闇に落ちたように僕は記憶が途絶えた━━━。