アロマティック
 はっきりと名前を口にするみのりに、聖以外の3人が動きを止める。みのりは続けた。

「そのひとに失恋したんじゃないの?」

「いや、だからあれは、みのりちゃんが考える失恋、ではないと」

 天音が語尾をにごす。

「違うの?」

「確かにあれは特別な存在かもしれないけど、失恋した相手が春子さんだって、永遠の口から聞いてる?」

「それは……わたしの憶測だけど」

 朝陽の問いかけに、確証のないみのりはいいよどむ。
 春。正しくは、春子さんっていうのね。みのりは心のなかで訂正する。
 これで永遠には、春子さんという女性が近くにいたことが事実になった。特別な存在だと知りながら、恋人ではないと否定するのはどうして?
 なんでもないひとのことを、寝ているときに呼ばないでしょ? 寝ぼけて女性の名前をいうのを聞いたら、特別なひとだって思うのは不自然じゃないでしょ?
 失恋したばかりだって話しを聞いたあと、特別な状況で女性の名前を聞いたらイコールで繋がらない?

「春子? なぁ、春子さんってだれだっけ?」

「聖さん、いまは思い出さなくていいから」

 天音が肩にすがりついてくる聖をあしらう。

「だったら春子さんってひとは永遠くんのなんだったの? 恋愛はご無沙汰だったって皆はいうけど、永遠くん本人は失恋したって確かにいってた。なにが本当なの?」
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