アロマティック
 転んだだけだから気にしないで、と笑ったみのり。
 ファンの子の目を気にして、困るのは俺だからと距離を置こうとしていたみのり。
 それにひきかえ俺は、みのりがどんな思いでいたのかも知らず、怪我の心配をするだけで他に気持ちが回らなかった。
 真実を打ち明けなかったみのりに腹が立った。こんなことが起きるという可能性を想定していなかった自分自身にも。
 朝陽の腕を掴む。

「もう落ち着いた」

 掴んだ腕をどかして、壁になっていた朝陽の脇をすり抜ける。

「その顔は落ち着いてないだろ」

 慌てて朝陽が追いかける。永遠の足はまっすぐ楽屋へ向かっていた。

 みのりのもとへ___。
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