アロマティック
 皆と顔を合わすのはまだ少し気まずいけど、永遠のそばにいたいという気持ちも強かった。

 彼がキスをしようとしたとき、最初はふざけていたから、急に雰囲気が変わったときは、戸惑ってしまった。だって、まさか、あんな展開になるなんて想像もしなかった。

 永遠は、ちゃんと逃げる隙を与えてくれたけど、わたしは逃げなかった。

 わたしは、嫌じゃなかった。

 見ているこっちが溶けてしまいそうな、熱を秘めた燃えるような眼差し。僅かに開いた魅力的な唇。
 あんなセクシーな顔をされたら、拒むことができるひと、いるんだろうか?

 以前のわたしなら、拒んだかもしれない。
 でも、いまは……。

 男の人を、心から信じる。

 いままでは、前に進む勇気もなくて無理だと諦めていたけど、永遠が相手なら、わたしは変われるかもしれない。
 彼がいった通り、永遠なら過去の呪縛から救ってくれるのではないかと、前向きな気持ちになれた。

 平常心を取り戻し、明るい気持ちでスタジオの前までたどり着いき、みのりは重い荷物と格闘しながらドアを叩いてなんとか室内へと足を踏み入れた。

「失礼します」

 ドアを開けて直ぐに室内の雰囲気が違うことに気づいた。
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