アロマティック
「というわけで、馴れ馴れしく近づかないでほしいんだけどな」

 真剣な表情の聖が、天音の横に立つ。

「俺ら黙ってないよ」

 年長者らしく怒りを抑え、落ち着いた表情のリーダー、空が、朝陽の横に並び立つ。
 みのりを中心に、5人の男性が守るように立つ姿は圧巻だった。

「なるほど。ずいぶん可愛がられてるみたいじゃないか。あの頃は一途で無垢だった。あれは、見せかけだったのか? 今は5人を相手に……か。まるで売女だな」

 蔑んだ表情で吐き捨てたその目は、汚いものを見るかのように細められていた。
 永遠の瞳が怒りに燃えた。
 みのりの後ろで歯を噛み締める鈍い音。彼女から離れて、目の前の男に殴りかかるのを、天音、朝陽、聖、空が、4人がかりで押さえにかかる。凌を真っ直ぐ見据え、我を忘れるほどの怒りで向かっていく永遠を押さえるのは困難を極めた。
 一方、永遠から自由になったみのりは、決然とした足取りで凌の前へ歩みを進めた。
 素早く腕を振り上げ、凌の頬を目掛け、渾身の力を込めて躊躇うことなく平手打ち。
 永遠と、永遠を押さえようとしていた4人が、動きを止めるほど小気味良い音が室内に響いた。

「わたしのことをどんな風にいったって構わない。だけど、皆を巻き込んでそんな風にいうのは許さない! 出ていって! 今すぐに‼」
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