アロマティック
そして今、違う問題にも直面していた。
誰もがその場を動かなかった。
見なくてもわかる。沈黙の問いかけ。
あんな醜態を見せてしまったのだ。全てを話さなければ、納得してもらえないだろう。
最後まで話す勇気はあるだろうか?
みのりは、なけなしの勇気をかき集め、皆に背を向けたまま、重たい口を開いた。
「大学の受付の仕事をしていたとき、凌とつき合っていたの。もうそのときから凌は、劇団に入っていたのね。その頃からファンていうのかな……応援してくれる取り巻きの子たちがいて……」
凌の隣りにいるわたしを、その子たちは彼女だと認めてくれなかった。
目障りだと罵声を浴びせられた毎日。
「わたしが邪魔だったのかな。ある日、階段の上から突き落とされて……気づいたら病院のベッドだった」
階段を落ちるわたしの耳に入ったのは『ざまーみろ!』嘲りや、憎しみに満ちた声。
「足、折っちゃって。しばらく入院することになったの。ドジだって、怒られたりしたけど凌は、心配して毎日お見舞いに来てくれた」
心配してくれたあのときの表情は、本物だった。
みのりの話しに耳を傾けていた永遠が眉をひそめた。
「ドジ? ドジだって怒るのおかしくないか? みのり、お前……もしかして落ちた原因いってないのか?」
あの頃は、凌が全てだった。
誰もがその場を動かなかった。
見なくてもわかる。沈黙の問いかけ。
あんな醜態を見せてしまったのだ。全てを話さなければ、納得してもらえないだろう。
最後まで話す勇気はあるだろうか?
みのりは、なけなしの勇気をかき集め、皆に背を向けたまま、重たい口を開いた。
「大学の受付の仕事をしていたとき、凌とつき合っていたの。もうそのときから凌は、劇団に入っていたのね。その頃からファンていうのかな……応援してくれる取り巻きの子たちがいて……」
凌の隣りにいるわたしを、その子たちは彼女だと認めてくれなかった。
目障りだと罵声を浴びせられた毎日。
「わたしが邪魔だったのかな。ある日、階段の上から突き落とされて……気づいたら病院のベッドだった」
階段を落ちるわたしの耳に入ったのは『ざまーみろ!』嘲りや、憎しみに満ちた声。
「足、折っちゃって。しばらく入院することになったの。ドジだって、怒られたりしたけど凌は、心配して毎日お見舞いに来てくれた」
心配してくれたあのときの表情は、本物だった。
みのりの話しに耳を傾けていた永遠が眉をひそめた。
「ドジ? ドジだって怒るのおかしくないか? みのり、お前……もしかして落ちた原因いってないのか?」
あの頃は、凌が全てだった。