アロマティック
「うん」

「えっ和菓子作れちゃうの!?」

 当たり前のことを聞かれたようにあっさり頷く空に、みのりはまんじゅうを詰まらせそうになってむせる。椅子をひっくり返しそうな勢いで驚いた。

「だって俺、和菓子屋の息子だから、だいたいのものは作れるよ」

「ほぇぇっ!?」

 今度は口に入ったままのまんじゅうが、口から出そうになる。
 アイドルで和菓子!? ってか、和菓子屋の息子!
 そういえば以前、お礼にもらったすあまも、コンビニとかスーパーで売ってるような、パッケージ入りのやつじゃなかった。

「もしかして以前くれた、すあまも手作りだったの!?」

「うん。あ、でも、内緒だよ。和菓子屋の息子だってことは公にしてないんだ」

「そうだったんだ。リーダーの手作りだったんだね。心のこもった和菓子なんだもん、美味しいわけだよ」

 ひとつめのハムスターまんじゅうを食べ終えて、ふたつめに手を伸ばす。頬張るみのりに浮かぶのは、美味しいものを食べるときの幸せの満面の笑み。

「それやめて」

 空が、テーブルに並ぶアロマ基材を興味深げに弄りながらやんわりという。

「え?」

 口元におまんじゅうを持っていった手が止まる。
 突然のことで、みのりにはなにをやめてほしいのかわからなかった。

「リーダーはやめてほしい。みのりちゃんはメンバーじゃないでしょ」
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