アロマティック
「それは、そうだけど……」

 冷たく突き放され、いままでのことを全否定されたような気分に陥り、ショックで言葉が続かない。

「リーダーは禁止」

「あ……ごめんなさい」

 皆がそう呼んでいるからわたしもリーダーって呼んでいたけど、もしかしてずっと嫌だったのかな。仲間意識みたいなものを感じていたぶん、ふたりの間に距離を置かれたような感じがして、今の発言は……。
 黙り込むみのりに、アロマのラベルを見ていた空が真剣な表情で振り向いた。

「空でいいから」

「えっ? そら、くん?」

「だって、ずるいよ。永遠、聖ちゃん、天音、朝陽は皆、名前で呼んでるのに俺だけリーダーって」

 そ、そういう問題?
 呼ばれ方、気にしてたってこと?
 みのりは唖然とした。

 口を尖らせ、愚痴っぽく呟いた空。
 親しい間柄のように名前で呼ばれること、最初はそんなことどうでもよかった。
 空は、同じ25歳の永遠と、聖より早く生まれたというだけで、Earthのリーダーを任されているが、メンバーをまとめたり率先してなにかをしたりというリーダーらしいことをしているつもりはなかった。
 もともと自分が興味の持てないものには、無関心。歌とダンスが仕事で、他のメンバーのようにドラマに出るなんてまず考えられなかった。
 休みの日は、和菓子を作るか、和菓子の新作を考えるか、和菓子屋巡りをしている。
 女性に関しては、これまで自分が付き合ってみたいと思えるような異性も現れなかった。ただ、コンサートに会いに来てくれるファンの子がいればそれで満足だった。
< 191 / 318 >

この作品をシェア

pagetop