アロマティック
「和菓子? うーん、あるっていえばあるかな」

「え、マジ?」

 みのりの反応に、興味を引かれたのか身を乗り出してきた。

「なに? なに作ったの?」

 目をキラキラさせ、生き生きとした表情。今まで見たことないくらいの食い付きっぷりだ。
 さすが和菓子屋の息子。

「そんな手の込んだものじゃないんだよ。白―――」

「あら、リーダー」

 ティーポットにお湯を注ぎ、質問に答える途中で違う声が被さってきた。その声の主を、みのりと空が同時に振り返る。

「あ、天音」

「天音くん」

 パーカーにデニムというラフな格好で、肩にカバンをかけた天音が現れた。テーブルに荷物を置くと、みのりのとなりの椅子に座る。

「おはようございます。あ、みのりちゃん、ぼくにもハーブティーください」

 突然の登場も天音はいつも通りハイタッチを交わして、何事もなかったように会話に加わる。

「あ、お菓子」

 さっそく空の持ってきた和菓子にも気づいたようだ。

「これ新作? もしかして寝ないで考えたんですか?」

 ハムスターまんじゅうを指につまんで、大きな口を開けパクリ。

「ん、少しは眠った。新しいの差し入れたかったから」

「差し入れのために寝不足!?」

 そこまでしてくれたのかとみのりは驚き、売れっ子アイドルの体が心配になった。

「空くん、大丈夫? 早く帰って寝たほうがいいんじゃない!? 体壊したら大変だよ」
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