アロマティック
 心配するみのりの気遣いが、空には嬉しかった。

「大丈夫。今夜その分、たっぷり寝るから」

「そうそう。気にしなくていいんです。ね、空くん?」

 普段はリーダーと呼んでいる天音が、わざとらしく名前を強調して呼ぶあたり、みのりと空の間にあったやりとりを敏感に感じとった模様。

「リーダーが和菓子にかける情熱はハンパなくて、常にエンジン全快ですから。仕事よりも力を入れてるんじゃ? って見てるこっちが疑うくらい。でもま、ちゃんと自分の体と相談して動いてるひとだから大丈夫ですよ」

 天音の言葉に安心したみのりは、ハーブティーを蒸らしている間、ふたりの様子を観察した。
 天音がまんじゅうを指さし、なにか問いかけ、笑いながら首を振る空は、本当に仲良さそうだ。

「ね、みのりちゃんもそう思うでしょ」

 ふたりのやり取りを見守っていたみのりが、会話に引き込まれる。

「えっなに?」

「このおまんじゅう、ハムケツだよね」

 空の作ったハムスターまんじゅうを、手のひらに乗せた天音が楽しそうにいう。

「は、ハムケツ?」

 天音の発言に吹き出して、おまんじゅうに顔を寄せ、改めてじっくりと見た。
 まるっとしたフォルムに、特徴的な背中の模様。頭を丸めて寝ている姿。

「うーん、確かにハムケツまんじゅうってネーミングはいいかも」

「マジ?」
< 195 / 318 >

この作品をシェア

pagetop