アロマティック
「そういえばさっき、天音が来て邪魔が入ったけど、みのりちゃん、和菓子作ったことがあるんだって」

「邪魔ってなんですか。邪魔って」

「あーうん、でも本当に簡単なものだよ」

「で、で? なに作ったんだっけ?」

 空の興味しんしんの視線に見つめられ、みのりは苦笑。なんだかいいづらくなってしまった。

「あなたのそんな生き生きとした姿、久しぶりに見ましたよ」

 空の様子に、天音が率直な感想をのべる。空は天音の吐いた毒を無視したまま、みのりが話すのを待った。

「えっと、だから、あの……白玉をね、何回か作っただけだよ」

「白玉ってさ―――」

 目を輝かせて話し始める空を、天音が遮る。

「はいはい、和菓子の話しはもういいです。お腹一杯ですよ。そんなことよりも、せっかく遊園地にいるんだからなにか乗りたいよね?」

 空の和菓子トークは強制終了されて、話しはみのりに振られる。自分に注目が集まり、とんでもないと首を振った。

「仕事できてるから」

「いいじゃないですか。仕事でも美味しい思いしたもん勝ちだよ。せっかくの機会だから、後でさ、皆で乗ろう! なに乗ろっか?」

「う、うーん、そうだなぁ」

 空を可哀想だと思いつつ、本当にいいのかな? 戸惑いながらも、自分の見渡せる範囲で首を動かした。
 ジェットコースター、メリーゴーランド、ミラーハウスに、船のアトラクション。
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