アロマティック
 4人目の声に、3人が振り向く。
 そこで助け船の如く現れたのは、Tシャツの上にシャツを羽織ってジーンズというラフな格好の朝陽。
 ぎこちない間のあとに、タイミングよく登場した朝陽は、空と天音に大袈裟なくらい歓迎されている。
 みのりは次々と現れるメンバーに、Earthが集まって仕事があるときの、楽屋にいるような錯覚を覚えた。

「朝陽くんも友情出演?」

「俺? 出ないよ。近くで撮影やってたから寄った。みのりちゃん、これやる」

 みのりを挟んで、天音とは反対どなりの椅子に座った朝陽が、カバンからいくつものスティック状のものを取り出す。テーブルの上にコロコロと、手のひらに収まるほどのものがたくさん出てきた。全て見た目は同じデザインで、中央部に立体的な花のワンポイントがついたゴールドカラーのスティック。
 ひとつ手に取って確かめてみる。
 キャップを外し持ち手の部分をくるくる回すと、明るい色をした口紅が顔を出した。
 これは……男のカバンから口紅?
 疑問が浮かぶみのりに、朝陽が歯を見せて笑った。

「CMの撮影でもらったんだよ。新色フルセット。撮影用のサンプルだけど、全部新品同様だから」

「こんなにたくさんのカラーリップ、お店に行ったときくらいしか見たことない」

 テーブルの上に少なくとも10本以上はある。

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