アロマティック
「まさかリーダーまで来てるとはね」

「俺、一番乗り」

 空が珍しく勝ち誇ったようなどや顔で、顔の前に突きだした手の親指をたてる。

「計画したわけでもないのに、撮影初日から皆、集まりましたね。考えることが一緒ってことでしょうか? 約一名来てませんけど」

「いや、来るでしょ」

「はい、来ると思うひとー」

「はーい」

 同時に3人の手があがる。
 聖が現れるのも時間の問題だな、なんて話していると、そこへ撮影が一段落した永遠が現われた。

「あれ、みのりは? って……」

 そこに揃う面々の顔を見て、言葉が止まる。

「あんたたちなにやってんの!?」

 わちゃわちゃと楽屋にいるときと変わらない光景に、声が裏返る。

「俺、差し入れ」

 と、リーダー。ハムケツまんじゅうと命名されたおまんじゅうを差し出す。

「そりゃドラマの仕事ですよ」

 にっこり笑う天音。

「CM撮りの帰り」

 朝陽がテーブルに並んだ口紅を指さす。

「リーダーからの差し入れは、ありがたい。けどさ、朝陽のCM撮影は東京のスタジオだっただろ。帰りにしても遠回りでしょうが。それに、天音。お前の撮影は明日からだろ? しっかり者の天音が日にちを間違えるわけない」
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