アロマティック
 ある日、Earthの楽屋に、永遠のアロマアドバイザーとして入ってきたみのり。
 あのとき、まだ彼女がいた俺は、みのりのことを面倒な存在だとしか考えていなかった。
 アイドルは女性に注目されるのが当たり前。
 個性的な5人のメンバーを前に、キャーワー騒ぐわけじゃなく、ひたすら自分の仕事を淡々とこなす毎日。目の前にいい男が5人もいるのに、そこには全くの無関心。過去に男との苦い思い出があったにしろ、少しもブレないその姿に、そんな女がこの世に存在するのかと意外だった。
 俺が本気で見つめればどんな女も思いのまま。夢みるような表情を浮かべて身を投げ出してくる。
 そんな俺に、人見知りが過ぎると面と向かって説教を垂れた女。
 ファンに背中を押され、転んだときも、自分を犠牲にしてまで永遠を守ろうとした姿を見て、こんな女もいるのかと驚いた。
 元カレ凌との再会に、苦しみをさらけ出し、それでも俺らが凌に罵られると、許さない! 背中の毛を逆立てるように怒りをあらわにした。
 色んなみのりを見てきた。

 今さら、どうして俺らにまで強がる?
 困ったなら頼ればいい。疲れたら肩くらい貸してやる。
 嫌な思いを引きずったまま心のうちもさらけ出せないなら、勝手にこっちが忘れさせてやる。
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