アロマティック
「なんだよ。むちゃくちゃ楽しそうじゃんか」

 みのりの肩に後ろから大きな手が乗せられ、心地好い低音ボイスが耳に届く。
 永遠の温もりを感じると共に、ほどよく力が抜けた。

「お、聖ちゃんも来たか。ここは遅いというべきなのか?」

 ハイタッチをするにはふたりの間に距離があったので、代わりにまっすぐ伸ばした二本の指を頭の横に振る聖に、やれやれと永遠は苦笑い。

「永遠、みのりちゃん見て」

「ん?」

 いわれるままに、後ろから身を乗り出してのぞき込む。みのりに腰を屈めた永遠の、整った貴公子顔が至近距離に近づく。

「みのり?」

「は、はい」

 みのりはドキドキした。顔のうえを永遠の視線がさ迷い、唇に留まる。

「あ。口の色が違う」

「うん」

「キラキラツヤツヤの濡れたような唇が……」

 いいかけた永遠が不意に顔を離して直立に立つと、遠くを見た。代わりにメンバーが言葉を引き継ぐ。

「美味しそう?」

「キスしたくなった?」

「照れてるよ」

「うん、あれは照れてるね」

 永遠に指をさしてこそこそと内緒話しをするフリをしているが、声は大きく丸聞こえだ。

「うるせー! ちょっとエロく見えたんだよ」

 そういった永遠の顔はほんのり赤い。
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