アロマティック
 思わず呟かれた言葉に4人が一斉に顔をあげると、うーん、と困ったように乱暴に頭をかく永遠がいた。

「キス。ふーん、キスしたんですか。やっぱり」

「やーん、俺もどさくさに紛れてキスされたらどうしようっ」

「しねーよ!」

「聖、体くねらすな」

 悪ノリする聖、永遠と朝陽に鋭く突っ込まれる。

 そう、俺はとうとうみのりとキスをした。
 正確には2回目だけど、1回目のどさくさ紛れのキスではなく、互いを認めあってのキス。
 いや……もしかしたらみのりは、戸惑っていたのかもしれない。

 高所恐怖症の俺は高いところに上がっていく観覧車に戸惑って……そんな優しいもんじゃないな。足の下に地面がないこと、鉄板の下に何もないことに大きな不安を感じて恐怖に襲われた俺は、足に力が入らず、半狂乱になっていた。
 パニックになった俺をなだめようと必死になったみのりが、俺に手を伸ばし、俺はすがるようにその小さな腕に抱きしめられた。
 そこからだ。変化が起きたのは。
 みのりのぬくもりと匂いに、観覧車のなかで感じていた重苦しい空気が、熱を含み柔らかくなった。
 恐怖心が飛んで、ずっと求めていたみのりのことしか考えられなくなった。
 舌を滑らせたみのりの首すじは甘くて、なめらかな肌のうえを夢中になって何度も舐めた。それだけでは満足できず、唇を求めた。
 唇は柔らかく、より甘くて、1回では満足出来ず何回も求め、俺はその唇に陥落した―――。
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