アロマティック
 観覧車? だからなんだ。
 みのりとキスしていれば怖いものか。

「なにあのふやけた顔」

「アイドルがしちゃいけない顔だよなっ」

「幸せそうな顔しちゃってますよ」

「自分ばかり美味しい思いしやがって」

 ヒソヒソこそこそ。4人が妬ましげにグチる。けしかけたのは、自分たちだということもすっかり忘れているらしい。

「幸せなはずが、避けられてるような気がするのはなんでなんだ?」

 先に進みたくないといったら嘘になる。というか、早く先に進みたい。
 みのりをこの腕に抱きたい。
 だが、凌のこともある。
 みのりの気持ちを考えて、じっくり進むべきなのだ。

「ベッドに近づく赤ずきんちゃんをいまかいまかと待つのではなく、いつも通りにしているのが一番なんじゃないんですか?」

「いつか訪れるチャンス、永遠ちゃんならものにできるでしょ?」

「和菓子と一緒で女の子もガツガツ食べるより、じっくり味わわないと」

「果報は寝て待てっていうだろ」

 俺が求めるのと同じくらいの気持ちで、みのりに求められたい。
 急ぐ必要はない。みのりからキスを望むように仕向ければいいのだ。

「いつも通り。いつも通り……」

 呪文のように繰り返す永遠に、大丈夫かと4人は顔を合わせ不安顔。
 そこへスマホのバイブレーションが鳴る。

「永遠のスマホ、鳴ってる」

「おう、サンキュ」

 永遠は一番近くにいた朝陽からスマホを受けとり、お礼をいい電話に出た。
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