アロマティック
 凌。
 永遠の今日のスケジュールは、コンサート準備のあと、他に仕事が入っている。わたしがアロマティックの撮影現場に行ったら別行動を取ることになる。
 わたしは永遠くんと離れて凌に指導するの?
 わたしが凌と仕事するの?
 考えたこともない展開に、一瞬立ちくらみを覚えて目を閉じる。

「勝手なことに……くそっ早く返事が欲しいそうだ」

 永遠から吐き捨てられた言葉。
 どうしてこんなに怒っているのかがこれでわかった。
 わたしのために、わたしを心配して怒ってくれているのだ。
 肩に永遠の手が置かれる。目を開けると、身をかがめ真っ直ぐに見つめてくる、永遠の瞳とぶつかった。

「向こうの都合に合わせる必要はないんだ。いやならいやってはっきりいってやろう」

 永遠は、みのりがいやだというのを待っている。
 でも。
 首を振るのは簡単だ。
 ここでわたしが拒否したら、余計なことを考えることもなく今日1日をやり過ごせる。
 わたしはそれでもいい。
 だけど、首を振ってしまったら。
 ドラマに関わるたくさんのスタッフの、ときには楽しげにときには真剣な様子で仕事に取り組む姿が頭をよぎる。わたしが拒否したら順調に進んでいたアロマティックの撮影が止まってしまう。
 永遠のアドバイザーとして、わたしが断ったら永遠の現場の雰囲気までも台無しにしてしまう。
 断ることなんてできないよ。
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