アロマティック
「冷たい」

「ヒンヤリするでしょ? 冷やして炎症を押さえる効果があるから、しばらくこうして様子みていてね」

 大好きなアロマを扱うことで、気持ちも少し落ち着いた。
 凌と顔を会わすことにも、覚悟ができた。
 あとはほんの少しの勇気……。

 濡れたハンドタオルを、赤くなった永遠の手に両手でそっと押さえたまま彼を見上げると、その瞳とぶつかった。心の奥までのぞきこむような真っ直ぐな瞳が見下ろしている。

 永遠、勇気をわけて。

 みのりは黙ったまま願いをこめて永遠を見つめる。永遠は空いている方の手でみのりの頬に触れ、親指で顎を持ち上げた。頭を下げる永遠の息が頬にかかり、迎えるように目を閉じる。
 すぐに柔らかな唇が重なり、不安でいっぱいだった心が永遠で満たされた。
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