アロマティック
 みのりが呼び出されたアロマティックの撮影現場は、ドラマのメインといってもいい、アロマショップでのシーンだった。既に何度か撮影をしている永遠に付き添って訪れている場所だ。
 実際、普段は通常営業しているショップでの撮影で、そのお店が定休日のときや開店前閉店後に借りて、撮影はまとめて進められる。

 アロマティックのドラマは、1話完結型で回毎にアロマのテーマが決まっていて、そこから物語が作られている。
 永遠から台本を一通り見せてもらっていたので、だいたいの内容は知っていた。
 みのりがアロマ撮影の指導とチェックに入る今回のテーマは、グレープフルーツ。
 兄弟の兄役の永遠が仕入れのために留守にしている間に、弟役の凌が問題を解決する話し。
 恋する学生が、ダイエットに励み好きな人に告白するというストーリーだ。

 こちらに来てからのみのりが必要とされているシーンの台本チェックも済ませ、今回の撮影で必要な基材も、ちゃんと揃っているかの確認も終わり、あとはメインの凌を待つだけになっていた。

 準備を終えた凌が楽屋から出てくるまで、時間が余ったみのりはアロマショップの店内の様子をじっくり見ていた。
 赤い屋根に、白亜の壁。両開きの窓、お洒落な外観に様々なアロマ基材の並ぶ店内。アロマグッズはガラス製品が多いため、店内は広々としていてひとつひとつのアイテムが見やすく、ライトアップも効果的で1度は手に取ってみたくなる雰囲気作りがなされていた。
 通路も行き交うふたりがぶつからないように大きく取られていて移動しやすくなっている。窓際にはサンキャッチーが飾られていて、太陽の光を取り込み店内をキラキラと輝かせていた。ちゃんとお客の立場に立ってお店が作られているのが伝わってくる。
< 234 / 318 >

この作品をシェア

pagetop