アロマティック
「みのりが好きだったんだ。いまも気持ちは変わらない。でも、押しつけるのは……だめだよな」

 ありがとう? ごめんなさい?
 なんて答えたらいいのか迷った。
 凌は捨て犬が愛情を求めるように、下からのぞき込んだ。

「恋人に戻る可能性は―――」

「ごめん、1%もない」

 即答してしまった。

「は、はは……」

 気まずさを吹き飛ばすように、天井を見上げた凌が無理やり笑う。
 可哀想だと思ったけど、可能性がないのに期待させるのは良くない。

「いまのみのりには、永遠さんがいるもんな」

「………」

 どう答えていいのか頭を悩ませるみのりに、凌は次々と質問を浴びせてくる。

「恋人じゃないっていってたけど、本当は恋人なんだろう?」

「一緒にいてくれるけど、恋人ではない」

「本当なのか? ぼくはてっきり……もちろん、もう好きだっていわれてるだろ?」

「……いわれてない」

 しぶしぶ打ち明けるみのりは、居心地悪そうだ。
 うそだろ?
 あれだけ独占欲むき出しにしてる男が、まだみのりに気持ちを伝えてないのか?
 凌は首をひねった。

「信じられないな。みのりはどうしたい?」

「どうしたいって……」

 言葉を探して黙りこむ。
 ずっと一緒にいたい。
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