アロマティック
 永遠……。
 唖然としたまま、ふらふらとその場に崩れる。
 優しく触れる手。
 いつもそばにあったのは、確かなぬくもりとあたたかな眼差し。
 それは決して強要するものではなく、あくまで自然。ときには反応をうかがい、一歩引いてわたしの嫌がることはひとつとしてしなかった。
 苦い記憶に苦しむわたしを、励ましてくれたのも永遠。
 わたしが乗りたいといった観覧車に、高所恐怖症なのに付き合ってくれたのも、凌に掴まったとき助けてくれたのも永遠。
 甦る永遠との思い出。そこには、言葉にはできない愛情があったのだ。
 思い返せば、いつものびのびと自由にしていられたのは、包み込むように見守ってくれる永遠の存在がいつもそこにあったから。

 その場に座り込んだままのみのりが、黙り込んだまま具合悪そうにしていることで、声をかけても聞く耳を持たなかったふたりの関心が、ようやくみのりに移った。

「みのり、どうした?」

 しゃがんだ永遠の手が肩にかかる。その瞳には気遣いが表れている。

「頭を打ってるんです」

 凌は辺りを見回し、投げ出されたままの保冷剤を包んだタオルを見つけると拾いに行く。

「打った?」

 眉をひそめ、みのりの頭をそっと探る。

「いたっ……!」

 みのりが顔をしかめた。

「たんこぶになってる」

 後頭部を撫でた手が、熱を持って腫れた部分に触れ、唖然とする。凌が持ってきた冷たいタオルを受け取って、熱を持って腫れた部分にそっとあてる。凌は永遠とは反対側に座り込み、みのりの様子を心配そうにうかがっている。
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