アロマティック
 翌日。
 羽田空港国際線ターミナルに、3人の姿はあった。

「来てくれてありがとう」

 既に搭乗手続きを済ませ、大きなスーツケース片手に、紺色のスーツを着た凌が、みのりと永遠に感謝をのべる。

「それにしても急だな」

 デニム素材のシャツに、白のパンツ。大きなサングラスにシャツと同じような素材のバケットハットを被った永遠がいう。
 広いターミナル、早朝のロビーはひともまばらで、ときおり3人の前をすれ違う人々の靴音が響く。

「すみません。語学留学のことはだいぶ前から考えていて、いまがいい機会かなと思いまして。前もっていうとマスコミが煩いから、お知らせするのが直前になってしまいました……みのり?」

 みのりはいつまでも黙っていた。永遠や凌と顔を合わせることなく、うつ向きがちで、パステルカラーのワンピースのスカート部分を握りしめている。

「お前のせいだぞ。みのりは昨日からすっかり元気をなくしてしまった」

「みのり、ごめん」

「もっと早くいってくれたらよかったのに」

 みのりがやっとしゃべった。しかし、凌を見ることなく横を向いてふてくされて、だったが。
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