アロマティック
「すごくない!? いま人気絶頂の「Earth」だよ!?」

「うん」

「女子ならみんなキャーキャーいっちゃう「Earth」だよ!? スーパーアイドルなんだよぉ!?」

「うん」

「うんって、うんうんばっかり! 反応うす~いっ」

 理花の文句にも関心がなさそうだ。そこへ注文したハイボールの大ジョッキが来て、豪快に飲んでから、

「ただのアイドルグループでしょ? アイドルグループってカテゴリーから抜ければ、ただの男じゃない」

 思ったことを率直に述べる。

「ただのって……素敵な5人組だよ~」

「げっ5人? 男5人もいたら暑苦しいったらありゃしないわ」

「みのりちゃん、クールすぎ」

 手を振って自分を扇ぎ、冷めた目で分析するみのりは、本当に興味がなさそうだ。
 生身の人間とはいえ、そうそう出会う機会のないカッコいい男子にも無関心なみのりに、理花は心から心配した。男性不信もここまでくると重症。かといって2次元の世界にも興味はない。恋することの素晴らしさを思い出してほしい。女の子であることの喜びを、ときめきを思い出してほしい。このままでは大事な幼馴染みが干物になってしまう! なんとかしてあげたいと思って、きっかけのないまま早数年……いまのところ理花に出来ることはなさそうだった。
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