アロマティック
「だいたいアイドルの前に、ひとりの男じゃない」

「チビ子みたいな反応、すげー新鮮」

 新しいオモチャを見つけた男の子みたいに、瞳をキラキラさせて興味津々の永遠に、みのりは腹立ちを通り越してため息をついた。

「あのね、昨日から気になってたけど、そのチビ子ってやめてくれない? わたしにもちゃんと親が付けてくれた名前があるの」

「ダメ? チビ子かわいいのに」

「はぁ? どこが?」

 残念そうに呟く永遠に、みのりは迷惑だと眉をひそめた。
 永遠の考え方にはついていけそうもない。例えあだ名だとしても、チビ子はない。果たしてうまくやっていけるのだろうか? 先行き不安だ。
 みのりが頭のなかで頭を抱えたとき、走っていた車のエンジンが止まり、顔をあげた。

「これから雑誌の撮影とインタビューな」

 後部座席のドアが開き、車を降りた永遠の後を追う。入り口に警備員の立つ建物に入って、受け付けで挨拶を済ませると、幾つかの扉を抜ける。

「ここ、楽屋ね」

 ドアの横に、名前の書いてある紙が貼ってある。

・Earth

 空様
 永遠様
 天音様

 トン! 緩く握った手の甲で1回ノックをした永遠が楽屋へ入っていく。みのりがそれに続く。
 先に先客がいたらしい。

「永遠、おはよ」
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