アロマティック
「そりゃアイドルですから。スッピンで撮影には入れませんよ。まぁベースがいいからこのままでもいいんだけどね」

 永遠が鏡越しに笑う。その手は慣れた様子でパフにファンデーションを付けている。
 アイドルは男でも化粧するのか。

「化粧するとカメラ映えするんだよ。それに、荒れた肌も隠せる」

 なるほど。確かに肌荒れしたひとがテレビや雑誌にいたらビックリするわ。みのり納得。
 天音はスマホを弄るのに熱中し、永遠は肌の様子を確かめながら熱心にメイクをしている。手持ち無沙汰なみのりは椅子に座ると、テーブルに置いてあったメンズファッションの雑誌を何気なくパラパラめくり、ビックリした。
 雑誌のなかに永遠がいたのだ。お洒落なネイビーのスーツを着た永遠が、クールな表情で石畳の欧風の街並みを歩いている。
 それにしても顔小さい。足長い! いわゆる……9頭身ってやつだ。スーツがよく似合ってる。それにこの表情……貴公子のような気品を漂わせた、息を呑む美しさ。
 本当にいま、ここにいる永遠と同一人物? みのりは首をひねる。その永遠はパフで肌を整えている。

「永遠、カッコいいと思いませんか?」

 天音がスマホから顔をあげて、永遠を見ているみのりに問いかける。

「うーん、全然雰囲気が違うから、本当に同一人物なのか疑ってたところ」
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