アロマティック
「そのときに取ったのは1級。あれから職に活かそうと……」

 みのりは財布から資格取得証明書を出す。

「アロマ……インストラクター?」

 目の前に出されたカードを、理花が読み上げる。

「ちょっと難しかったけど」

「えぇ~インストラクターとかってなんか凄そう!」

「講師として教室開くこともできるんだ」

「ふおぉ~先生!? すご~いっ資格取得頑張ったね! おめでとうっ」

 理花は手を叩いて、自分のことのように喜ぶ。

「ありがとう。ずっと趣味で続けてたアロマテラピー、好きなことが仕事に活かせるんだって、もっと早く気づけば良かった。そうすれば何回も転職繰り返す必要なかったかもしれない」

「なるほどねぇ。理花はいいと思う! よい仕事先見つかるとよいねっ」

 アロマの話しをしていたら、イヤなこと思い出した。
 大好きなアロマ、いい思い出しか浮かばないはずなのに、その思い出に今日、黒歴史が出来てしまった。

 さきほど本屋で出会った、最低最悪の男。
 思い出したらイライラも復活してきた。大ジョッキのハイボールを飲み干す。どすんと大きな音を立ててテーブルの上にジョッキを置いたことにも、腹立ちは表れている。
 周りが賑やかでも、その音は大きく響いた。驚いた理花が顔を上げて、仏頂面のみのりとぶつかる。

「みのりちゃん、顔が怖い」
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