百合の花

寝室から持ってきた、ノートとスーツケースをこたつのよこに置く。


「あふ…え?」

あくびをしながらこたつに座ると、すすすと瑠璃が俺のよこに座り込む。

きゅ、と俺の腕を己の胸に抱き締め、離れるなと言いたげに視線を通わす。


弥生が怖かったんだろうな、可哀想に。


よしよしと頭を撫でれば、猫みたいに目を閉じた。

ああこの生き物作ったの誰、出てこいノーベル賞やるから。


「あああ…私も瑠璃ちゃんに腕抱かれたいいっ!」


叫ぶ弥生を実兄を見るときと同じ視線で眺める瑠璃。



そう、もうお分かりだろう。



弥生は伊織と並ぶレベルの瑠璃ファンだ。

初めて会ったときは、あまりの可愛さにモデルがぷるぷると震えてた。


瑠璃の中では、たぶん『変な人』に認定されてるだろう。


伊織は守りたい等の理由で行動に突っ走るが、弥生の場合は可愛さに絶えきれず突っ走るからな。

限度がないんだろう。



「あ、出た〜!『守白弥生ノート』!」



瑠璃と会ったのが嬉しいのか、やけにハイテンションな弥生が指差すは『守白弥生』と名前が書かれたノート。

中には今までの弥生のデータが入っていて、親父から貰ったものだ。


< 18 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop