百合の花
寝室から持ってきた、ノートとスーツケースをこたつのよこに置く。
「あふ…え?」
あくびをしながらこたつに座ると、すすすと瑠璃が俺のよこに座り込む。
きゅ、と俺の腕を己の胸に抱き締め、離れるなと言いたげに視線を通わす。
弥生が怖かったんだろうな、可哀想に。
よしよしと頭を撫でれば、猫みたいに目を閉じた。
ああこの生き物作ったの誰、出てこいノーベル賞やるから。
「あああ…私も瑠璃ちゃんに腕抱かれたいいっ!」
叫ぶ弥生を実兄を見るときと同じ視線で眺める瑠璃。
そう、もうお分かりだろう。
弥生は伊織と並ぶレベルの瑠璃ファンだ。
初めて会ったときは、あまりの可愛さにモデルがぷるぷると震えてた。
瑠璃の中では、たぶん『変な人』に認定されてるだろう。
伊織は守りたい等の理由で行動に突っ走るが、弥生の場合は可愛さに絶えきれず突っ走るからな。
限度がないんだろう。
「あ、出た〜!『守白弥生ノート』!」
瑠璃と会ったのが嬉しいのか、やけにハイテンションな弥生が指差すは『守白弥生』と名前が書かれたノート。
中には今までの弥生のデータが入っていて、親父から貰ったものだ。