百合の花

「じゃ、これからお医者さんごっこを始めます」


「……」

ぱちぱち、と瑠璃が無駄に手を叩く。可愛いなおい。

「ごっこじゃ困るから!真面目にやれ!」

弥生が怒るので真面目にやる。

瑠璃を見習え、あんなに無表情で乗りをこなすやつなんて早々いないぞ。


そんなことを思いつつ、スーツケースからポーチを取りだしてペンライトを点灯する。


普通の医者なら喉を見るんだろうけど、俺らは違う。


「ま、ぶし」

「我慢我慢」


弥生の目をペンライトで照らすのだ。


瞳孔が小さくなる。

結構酷なことをしているのは承知。

だが必要なことなのだ。



「…色が濃くなってんな」

青い空みたいな瞳が濃くなっている。

「えー?うそー…お薬のせいじゃなくて?」

「ん」

「…薬、変えたんじゃ?」

そぉっと瑠璃が発言してくる。

胸が擽られる、が、俺は瑠璃の発言を否定しなくちゃならない方が辛かった。


「前回の薬が効きすぎたみたいだから、弱くしたって言っても濃くなってんな。

今薬が効いてる真っ最中ということをひいても、やっぱり少しだけ濃い」


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