こうべ物語
叩いた音に反応して、ラウンジのボーイがすぐに近づいて来る。
その後ろに、最初に頭を下げてきた支配人がすぐに近づいてきた。
「お嬢様、申し訳ございません。何か私どもに失礼がございましたでしょうか?」
どうやらホテル側に落ち度があったと思い、駆け付けたらしい。
それに気付いた麻里奈は、落ち着きを取り戻し、何の問題もない事を告げて頭を下げた。
その姿を見届けるとさくらは席を立った。
「ほら、麻里奈さんにはたくさんの人が付いているんですよ。湊川神社の時でもそうです。涼子さんを助けているつもりでも、自分のお金持ちな姿を周りに見せつけているだけなんですよ。」
見下ろしてくるさくらを麻里奈も負けずに睨みつける。
「さくらちゃんのそうゆう行動は独りよがりって言うのよ。人の気持ちを無視してやった満足感を得ているだけなのよ。」
「先日の事は本当にありがとうございました。けれど、人の為に必死にやる事を馬鹿にされたくなんてありません!私は所詮、ただの田舎の中坊ですし、麻里奈さんとは違う事は改めて気づく事が出来ました。さようなら。」
そう言い捨てると、さくらはラウンジを飛び出し、自転車に乗って走り去った。