こうべ物語





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有馬温泉から自宅へ帰る山道で落ち着きを取り戻したさくらは、途中で自転車を降りてゆっくりと歩き始めた。



(さすがに年上の麻里奈さんに向かって失礼な事言い過ぎだよね…。)



心の中で後悔の気持ちが込み上げてくる。



『この人なんです。何だか体調が悪いみたいで。一緒に病院に運んでもらえませんか?』



『それは大変。分かった、私も協力するね。』



麻里奈が悪い人間ではない事は十分に分かっている。



(私の焦る気持ちが酷い事を言ってしまったのだろうか?)



『お前に何が分かるんだよ!俺は、俺は…、野球が出来なくなったらもう終わりなんだよ!』



『さくらちゃん、中学卒業まであと半年程だけど、最後まで勝利を支えてやってくれないか?』



『そっとしてもらいたい時もあるって事よ。』



(私が本当に出来る事って何なんだろう。)



『さくらちゃんのそうゆう行動は独りよがりって言うのよ。人の気持ちを無視してやった満足感を得ているだけなのよ。』



『彼の気持ちを考えながら、でもいいと思うけどな。』



(勝利…。)




《さくら×麻里奈 終わり》


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