こうべ物語
「勝利!」
呼ばれた声に反応して顔を向ける。
勝利は、声を掛けて近づいて来たさくらに少し驚きながら、思わずバットを振る手を休めた。
「さくら、どうしたんだ?」
「さくらちゃん。」
勝利の父親も驚いている。
その2人の反応を見ながらも、さくらはニコニコと近づいて行った。
「ちょっと、買い物ついでに勝利が素振りしている姿が見えたからね。」
「こんな時間に何の買い物してたんだ?」
不思議そうな顔で見つめてくる。
「まぁ、何でもいいじゃない。それよりも夜遅くまで頑張っているんだね。」
午後8時。
グラウンドはおろか、公園全体見渡しても、3人以外誰もいない。
「ああ、秋には毎週のように対外試合もあるしな。」
「そういえば、この前の日曜日対外試合だったんじゃないの?」
「良く覚えていたな。お陰様で3打数1安打、1打点。」
「凄いね。」
『勝利が今日の試合、活躍しますように…。』
(私が湊川神社でお願いした効果が少しはあったのかな?)
そう思うと、自然と嬉しく思える。