沖田総司と運命の駄犬

次の日。




私は、急いで、小間物屋へ行った。



梓「すみません!これを買いたいんですが・・・。」



店主「ハイハイ・・・ってこれを、ダンナがですか?」



梓「はい!」




私は、香袋を渡した。




店主「おや・・・?これは、わらしからの贈られた物ですか?」




わらしの作った物にしか見えないのね?




私は、悲しくなった。




店のおじさんが、お香を、袋に入れてくれた。



梓「ありがとうございます。」




店主「でも、ダンナ、これは、男を・・・。」



梓「え?」



すると、お客さんが来て、おじさんは、そっちへ行ってしまった。




私は、屯所へ戻った。






梓「ふふふふん♪」




良い匂いで、気分が良い。




梓「おはようございます!沖田先輩っ!」




沖田「おは・・・って、その匂い・・・。」




梓「あはっ!気付いてくれました?これさっき、買ってきたんです♪」




沖田「買ってきたって・・・それ・・・っ。」




隊士「すみません。沖田助勤。ちょっとよろしいでしょうか?」




沖田「ん?・・・うん・・・。」



沖田先輩は、隊士の人と行ってしまった。





私が、部屋に戻ろうとしたら、誰かに、ぶつかった。




土方「おぉ。」




土方さんか。




梓「すいません!って、土方さん、おはようございます!」




土方「おはよう・・・。お前、その匂い・・・。」




梓「あ!土方さんも、気付いてくれました?さっき、買って来たんです!土方さんこそ、どうしたんですか?」






土方「あぁ。厠の後に、茶でも取りに行こうと、思ってな?」




梓「じゃあ、私、淹れて来ます!」




土方「あぁ。頼んだ。」




私は、お勝手に、お茶を取りに行くと、隊士さんがいて、お湯は、そこにいた隊士さんが、沸かしてくれた。




梓「ありがとうございます!」




隊士「いいよ。それにしても、梓ちゃん、その匂いって・・・。」




そう言われるが、隊士さんは、他の人に呼ばれて出て行った。




私は、お茶を持って、土方さんの部屋に行った。




梓「失礼します。」




お茶を淹れて、土方さんに渡す。





土方「ん。うまい。」




梓「やった!」




土方さんが、お茶を置くと、私を抱きしめた。




梓「え?」




なんで?







土方「梓・・・。お前、俺を、誘ってるのか?」




梓「誘ってる?」




土方「そんな匂い漂わせて・・・。」




梓「そんなつもりは・・・っ。」



耳に口付けられた。




少し、顔を離し、至近距離で、見つめ合う。




妖艶に、見つめられて、顔が近付く。




梓「っ!」



すると・・・。



スパーーーン!




「やっぱり!」



振り向くと、沖田先輩がいた。




梓「沖田先輩・・・。」




沖田「前に、言ったよね?僕以外には、触れさせちゃダメって・・・。」




沖田先輩は、部屋にズカズカ入り、私たちを引き剥がす。




梓「っっ!」




沖田先輩が、私を抱き寄せて、キスした。




土方「おい!止めろ!」




土方さんが、今度は、私と沖田先輩を離した。





沖田「自分は、良くて、僕は、ダメなんですか?」




土方「梓が、俺の所に来たから、そういうことだろ?しかも、人がイチャついてるのなんて、見たくねぇだろうが!」




沖田「僕だって、見せ付けられましたけど!朝から、何、盛ってるんですか?島原に行けば、良いじゃないですか?」



土方「お前が、行けよ?最近、入り浸ってるんだろ?」




沖田「僕の事は、良いんですよ!」




私は、二人の間に入った。




梓「二人とも止めて下さい!」




沖田「梓は、黙ってて!」




土方「あぁ。俺らの問題だ!」




梓「でも・・・。」



沖田「だいたい、梓が、いけないんだからね!」





梓「何でですか?」




二人の動きが、止まり、私を見つめる。




土方「お前、わかってて、俺の所に来たんじゃねぇのか?」




梓「へ?」




沖田「はぁ・・・。やっぱりね。わらしの梓が、そんな事するとは、思ってなかったけど。」




梓「何が?」




土方「お前の香だが、媚薬だ。」




びやく?




梓「媚薬って・・・。」




沖田「今、おなごの間で、男を誘うのに、流行ってるっていう媚薬だよ。特に、島原の芸妓が使ってて、それが、町娘まで、流行って・・・。」




梓「男を誘う・・・。」



土方「だから、その匂い漂わせて、俺の部屋に来たって事は、そういうことだろ?」




梓「あ・・・。」




そうだったんだ・・・。





梓「違います!私は、ただ、良い匂いだったから・・・。」




沖田「そういう考えなのは、梓だけだよ?この匂い漂わせて、男と部屋に二人でいたら、誘ってるとしか思えないでしょ?」





梓「確かに・・・。」



知ってる人が、この匂いを纏って、部屋に入られたら、そうなるよね・・・。




沖田「って事で。コレは、没収!」




沖田先輩は私から、奪った香袋をジッと見ている。




そして・・・。




沖田「ねぇ、梓・・・。コレ、自分で、作ったの?」




梓「はい。香袋が高かったから・・・。」




土方「そんなくらい、言えば、買ってやるのに。」




沖田「へぇ。梓、一応、袋は、作れるようになったのか・・・。ねぇ、僕にも、作って?」



梓「え?」




沖田「だから、僕のも、作って?」





梓「はい!じゃあ、土方さんの分も、作ります!」




土方「ん?あぁ。頼む。」













私は、少し、時間はかかったが、約束通り、二人に袋を持って行った。




土方さんと沖田先輩は、命懸けの仕事をしている。




無事に、いつでも戻ってこれるように願いを込めて作った。





二人とも、優しく嬉しそうに受け取ってくれた。







< 120 / 222 >

この作品をシェア

pagetop