沖田総司と運命の駄犬



僕は、土方さんの部屋に来ていた。




土方「何だよ。来るなり、何も言わずに・・・。」





僕は、座るなり、土方さんを無言で睨んでいた。




沖田「僕、言いましたよね?“手を出さないで下さい”って・・・。」




すると、土方さんは、ニヤリとした笑みを浮かべ、僕を見て言った。




土方「約束は出来ねぇって言った筈だが?それに・・・お前、あんとき言ったよな?梓は、まだ、お前と恋仲だって思ってないって・・・。だったら、梓は、まだ、誰の物でも無いだろう?俺が梓を口説いて、梓が、その気になれば、それが、梓にとっては、事実だろ?違うか?」





何なんだよ!そのそうかもって思わせるような言い訳は!





沖田「それでも、人の物に手を出すのは、いかがなものかと思いますけどっ!」




すると、土方さんは、笑みを消して、真剣な顔つきになった。




土方「そうやって、アイツをお前が、からかうからだろ?いいか?梓は、お前のことを想っているんだろうが、お前が、梓の気持ちを弄ぶようなことをするなら、話は別だ。俺が、お前より梓を幸せにしてやるよ。」




何言ってんの?



散々、自分は、おなごの心を弄んできたくせに!





それに、今、ハッキリと自分が、幸せにするって言った。






沖田「散々、おなごを弄んできた人が、よくそんな事、言えますね?」




土方「アイツは、俺にとって、特別なおなごなんだよっ!」




沖田「っ!・・・特別なおなご?」




その言葉に、カッとなる。




沖田「だったら・・・だったら、どうして、僕に、梓の世話役を任せたんですか?特別に、大事なおなごなら、自分で守るものでしょうがっっ!」




土方「そう出来るなら・・っ。・・・お前ぇには、関係ねぇんだよ!」





沖田「関係無くはないでしょ?いいですか?土方さんが、梓をどう想おうが、梓は、僕を好いていて、僕も、梓を好いてる。変に、横やり入れて、波風を立てないで下さい!それだけ、言いに来ました。」





僕は、部屋を出ようとして、思い出す。




沖田「今日の見廻りは、特に何もありませんでした。」





僕は、そう言って、今度こそ、部屋を出た。
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