沖田総司と運命の駄犬




次の日、僕は、稽古をしていた。




咳は、少しずつ、増えているが、まだまだ、体は動かせる。




すると、土方さんがバタバタッと音を立てて、道場に入ってきた。




土方「梓がいねぇ!」




僕は、その言葉と同時に、刀を手にして、道場を飛び出した。




僕は、なんとなく、あの廃屋にいるような気がして、その場に急いだ。




沖田「はぁ・・・。はぁ・・・。はぁ・・・。」




廃屋の前まで来ると、中から、声がした。




梓「ヤダッ!沖田先輩っ!助けて!」




ガタガタと音がしている。




沖田「梓っ!」





梓「嫌っ!」




「うるせぇ!ムリヤリすんのは、嫌いでないが、声、デカ過ぎなんだよ!お前!耳が痛ぇ!」




バンっ。




破れた襖を蹴破ると、目に入ったのは、頬が、赤く腫れ、気を失った梓に馬乗りになった男の姿。





僕は、刀を抜いた。




すると、男は、梓から退き、後ずさる。





沖田「何、しようとしてた?」




「あ・・・。あ・・・。」




沖田「僕の妻に何しようとしてたの?」




「つ、妻?男の格好で、客引きしてたから、乗ってやったまでだろ?お前、嫁にこんな・・・っ。」




僕は、男を斬った。





沖田「梓が、客引き?するわけないでしょ?そんな事・・・梓に・・・僕の妻に触れた罪は重い・・・。」




僕は、男の息の根を止めた。







僕は、梓に近付く。




沖田「梓・・・。やっぱり、梓は、ここに居るべきじゃないんだ・・・。はぁ・・・。はぁ・・・。」





近くの井戸で、水を汲み、手拭いを濡らして梓の腫れた顔に当てる。






ここにいたら、梓は、いつか傷つく・・・。




僕は、ギュッと、梓を抱きしめた。





そして、しばらく、梓の胸で泣いた。




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