沖田総司と運命の駄犬



屯所に、帰ると、土方さんと梓が、庭で、剣の練習をしていた。



竹刀を持つ梓を、後ろから、抱きしめるように、指導している。




しかも、土方さんが、優しい顔をしている。



土方さんのあんな顔、見たこと無い。




心に黒い、もやっとした気持ちが、少しずつ、湧いてくる。




梓だって、昨日、あんな寂しそうな顔してたのに、今の顔は、嬉しそうに頬を赤らめている。




面白くない。



こっちは、心配して、お美代ちゃんとの逢瀬を、切り上げてきたのに・・・。




すると、梓が、僕に、気づいて、走り寄ってきた。




梓「お帰りなさい!」



沖田「ただいま。土方さんに、可愛がってもらってたの?」




梓「剣を、覚えたらどうかと言われて、教えてもらってたんです!」



沖田「ふーん。そ。剣なら、僕が、教えてあげるよ。土方さん、ありがとうございます。」




土方「あぁ。梓、後で、さっき言ってたヤツが届いたから、取りに来い。」




梓「はい!」



何、それ?



沖田「何を貰うの?」



梓「えーっと・・・。何だっけ?あ!そうそう!芸妓さん御用達の香袋!なんか、土方さんが、芸妓さんの所に行ったときに、いい匂いだったらしくて、それを、贔屓にしている芸妓さんに贈るから私にも、一つ買ってくれたらしいんです!」




沖田「匂いって・・・。」




土方さんが、芸妓に贈り物するなんて聞いたこと無い。



しかも、男から、貰った匂いを纏うの?




それって、どういう意味があるのか、わかってんのかな?



って、こんなわらしにわかるわけないか・・・。




沖田「それ、僕にくれない?」



梓「え?」




沖田「お美代ちゃんに、あげたい。」




梓「土方さんが、良いなら、私は、良いです。」




沖田「ありがとう。じゃあ、聞いてくる。ねぇ、梓?あんまり、そうやって、イイ顔してると、勘違いされるよ?わらしなら、わらしらしくしときなよ。」



梓「どういう意味ですか?」




梓が、ムッとした顔をした。



沖田「やっぱり、梓には、わからないか・・・。もういいよ。とりあえず、これで、団子10本買ってきて!」




梓「はい。」




梓は銭を持って、屯所を出て行った。
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