沖田総司と運命の駄犬




部屋に戻ると、梓が戻ってきた。




梓は、団子とお茶を置いて、出て行こうとする。




沖田「一緒に食べる?」




皿に一串置く。



梓は、暗い顔で、俯いて首を横に振る。




僕は、梓の口に、だんごを突っ込んだ。




梓「ふぐっ!」




沖田「何か、言いたいことあるんでしょ?手短に言いなよ。」





そう言うと、梓の体がピクリとして、怯えたウサギのような目で見てきた。




梓「何でも、ありません。」




沖田「ふーん。てっきり、芹沢隊長の事が、気になってるんだって思ったけど?」




僕が、そう言うと、梓は、思っている事がなぜわかったのかという顔をした。




沖田「やっぱりね・・・。で?何を聞きたいの?」





梓「あの・・・。昨日の晩は、土方さん達とどこに行ってたんですか?」





僕は、しばらく考える。




嘘をつくか、どうか・・・。




まぁ、すぐにわかるか・・・。




僕は、本当の事を言った。




沖田「芹沢隊長の暗殺・・・。」



梓「え?」




それを、聞いた梓が、落ち込んだ顔をした。




沖田「だから、何?それ、聞いて、どうするの?」




梓「どうこうは、しないですけど、どうして?粛清ですか?」




沖田「梓には、関係ない。」





そう言うと、梓は、傷付いた顔をした。





巻き込む訳にはいかない。




前に、梓が、迷子になったとき、土方さんが、梓の目の前で、人を斬ったとき、梓は、気が、動転していた。





今度は、自分の知ってる人が斬られたとなれば、なおのこと、気が動転するだけでは、済まないかもしれない。





梓「か、関係ないですけど、沖田先輩が、怪我するのは嫌です!」




沖田「ぷっ。何それ?今回は、“怪我で済んで良かった”だよ?僕達は、いつ死んでもおかしくないところにいるんだ。」





梓「そんなの嫌です!」




沖田「梓には、わからないよ。そんな、命もかけたことない、ぬるま湯に浸かってるような生き方してきたんだから!そんな奴に、僕達の事を、どうこう言われる筋合いもない。」






梓「沖田先輩に、怪我して欲しくないって思うことも、危ないことして欲しく無いって思うのも、思っちゃダメなんですか?私は・・私は、意地悪されても、沖田先輩には、側にいて欲しいです!」





え?




さっきから何?




なんか、僕のこと好いてるってしか、聞こえようがないんだけど・・・。





沖田「梓って、僕のこと好いてるの?」





梓「違っ!」




僕は、梓を追いつめるように、距離を詰めて、問いただす。




沖田「僕の側に居たいんでしょ?」





梓「だから、それは・・・っ!」




真っ赤になっちゃって、可愛い。




沖田「良いよ?まぁ、洗濯板みたいだけど、一応、おなごだし?目を瞑れば、ヤレないこともない。」




僕は、梓に近寄り頬に手を置いた。




梓「ちょっ!なんか、色々と、失礼です!しかも、そんな気、ありませんからっ!」




梓は、目を瞑って、僕の胸を押し返す。



このまま、口づけたら、梓は、どうするのかな?




って、何、考えてるんだ?僕は!




正気に戻り、僕は、笑い声を上げた。




沖田「ぷっ!アハハハハッ!ほ、本気にしてるし!」




梓「え?」




沖田「ちょっと、からかっただけ。」





僕は、そう言うと、梓から離れた。




梓「ほ、本気になんて、してませんっ!」




すると、梓は、団子を、お皿から一本、取り上げて、口に入れた。




沖田「あ!それ、一番のお気に入り!」




梓「変なことしてきた、仕返しです!」




梓は、パクッと、その団子を口に頬張った。





この駄犬め・・・。




人が、優しくしてたら、つけあがるような真似を・・・。





沖田「梓・・・。それ・・・。僕が、一番のお気に入りって知ってて、食べたってことだよね?」




そう、梓が食べた団子は、僕の大好きなお気に入りの団子だ。




それを知って、食べるとは、良い度胸してるよね・・・。




僕は、梓を睨み付けて、刀に手を置いて、低い声で言う。




沖田「梓に、選ばせてあげるよ。一、このまま、僕に、斬られる。二、ここを出て、すぐに、団子を買ってくる。さぁ、どっち?」




梓「か、買ってきますっ!」




梓は、飛び出して出て行った。

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