素顔のキスは残業後に【番外編】第2話完結
付き合ってまだ間もないけど、分かったことがある。
どうやら柏原さんは人前で密着するのが苦手というか、嫌いのようだ。

彼の隣を歩いていても、手を繋いだり、肩を組んだり、腕を絡ませて頬を寄せたりってことは滅多にない。


今日のは暗闇で足元が危ないからだとは思うけど、今年最後に得しちゃった気分だなぁ。

前を向いて歩く綺麗な横顔を斜め下からそっと見つめいると、頬が緩んでしまう。

そんな分かりやすい私の反応を柏原さんが見逃すはずもなく、切れ長の黒い瞳が私を見下ろした。


「一人で笑って、薄気味悪い奴」

「薄気味悪いって――……溺愛する猫に失礼ですよ?」

部長についた嘘に乗っかりながらそう返すと、ふっと息をついた唇がニヤリとその口角を引き上げる。
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