素顔のキスは残業後に【番外編】第2話完結
前に来た時より厳しくなった寒さが、吐き出す息を一瞬で暗闇に溶かす。
ぶるっと肩を震わし、後部座席に置いたコートを取ろうと振り返ると、背中からふわりとコートを掛けられた。

「寒いから着てから降りろって、前にも言ったろ」

お礼を言いながらAラインのベージュ色のコートに腕を通してボタンを留める。

「時間ないから、もう行くぞ」

少し早口になった柏原さんに右手を取られて、「えっ」と思わず声が出た。

「なんだよ?」

「いえ。別に、なんでも」

柏原さんが手を握ってくるなんて、珍しいなって思って。

そう続けようとした言葉は喉の奥に留めた。だって、口にしたら一瞬で手を払われちゃう気がしたから。
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