狂気の王と永遠の愛(接吻)をイメージ画集とつぶやきの場
「また……お父様やセシエル様と戦うんですか……?」

「……えぇ。恐らくそうなるでしょうね」

「あ、愛の証なんて……戦いで得られるものではないと思いますっ……!」

「……平和な国で育った貴方がそう思われても仕方がありません。かつての私もそうでしたから……」

そう告げると悲しそうに視線を下げてしまった仙水。やはり何かが彼を変えてしまったことは事実のようだ。

「じゃあ、負けた方は……? 負けた方はどうなってしまうんです?」

(……お父様やセシエル様、仙水先生だって……私は誰にも傷ついて欲しくないっ……)

「アオイさん……」

(優しい彼女が戦いを好まないのは初めから分かっていた……)

アオイの悲痛な言葉に、より一層の深い悲しみを湛えた水色の瞳。
仙水の手がアオイの頬を優しく撫でると――


「それはお前が考えることではない」


柱の陰から姿を現した九条。漆黒の衣が影と一体となっており、彼に潜む見えない闇がまるで具現化したように広がっている。

「……選べぬ者はすべてを欲しがる……それが一番欲にまみれた選択なのだと気付きもせずにな」

「そ、そんなっ……私は……っ……」

弁解しようと口を開くが、そんな余地も与えぬ九条はさらに歩みを進め冷たい眼差しで続けた。

「意志もなく揺れるお前が勝者への供物に成り得るだけ幸せだと思え」

「……っ……」

(……選ばないことはすべてを欲しがること……)

絶句してしまったアオイは事実である彼の言葉に反論できない。自分がいつも皆を説得できずにいるのは、皆のいうことがもっともだからだ。

「九条!!」

「…………」

仙水の声でようやく口を閉ざした九条。普段冷静な彼がこれほどまで言葉を並べるのは珍しく、油断してしまったのだ。

「……席を外していただけませんか」

「……いいだろう……」

アオイを一瞥し、大人しく引き下がった九条。
彼の姿が見えなくなると仙水は申し訳なさそうに口を開いた。

「……気を悪くされてしまったらすみません」

「い、いえ……」

九条の登場により、心が折れてしまったアオイは仙水と目を合わせることが出来ずにいた。
そしてそれに気づいている仙水は躊躇いがちに微笑む。

「私たちは……"何も選ばなかった"ひとを知っているんです。だからこそ、揺れ動く心を力づくで奪ってしまいたかった――」

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