僕らはそうしてこうなった

「お母さん怒ってるかな」
僕らは重い足取りで家へと帰る。
変な意地を張ってお母さんに反抗した事を心の中で謝り、冷たい手を繋いで帰った。


僕らは二人で1つ。兄のネスは右手。弟のエールが左手。
なぜなら彼らには一本しか腕がないからだ。
生まれつき腕はないが、兄弟がいるため何不自由なく生きてきた。
二人で1つ。必ず一緒。

これからもずっと。


…なのに。


「こんばんは 僕たち」
40後半くらいの小太りの男が後ろから話しかけてきた。
「おじさん 誰?」
僕らは繋いだ手をキュッと強くし 不安をお互いに伝え合う。
この人、気味が悪い。子供ながらにそう思った。
「おじさんね、ここの近くの酒屋で働いてるんだけどね、ちょっと君たちにお願いがあるんだ」
「お願い?」
おじさんが一瞬ニヤァと汚い笑みを浮かべた。
「近くに荷馬車があるんだけどね、そこに荷物を乗せているんだ。はやく下ろさなきゃいけないんだけど、人手が足りなくて…一緒に手伝ってくれないか?」
「でも、僕ら早く帰らなきゃ。お母さんが待ってるんだ」
「そんな冷たいことを言わないでおくれ。こんな寒い中、おじさんを一人にしないでくれよ」
おじさんはどうしても手伝わせたいと言ってくる。
僕らは顔を見合わせて ネスが首を横に振った。
「ごめんなさいおじさん。僕ら本当に今すぐ帰らなくちゃいけないんだ。それに、僕ら 見ての通り一本しか腕がないんだ。荷物なんて到底持てないよ」
おじさんは作られた笑顔でニコニコとする。
「そうかいそうかい、それは残念だ。余計な時間を取らせて悪かったね。でもおじさん君たちのことが気に入ったんだ。ほら、今日はクリスマスだろ。何かプレゼントを買ってあげよう。お母さんの分も買ってあげようほら、お母さんと仲直りがしたいんだろう」
その時、ネスは違和感を感じた。
いつ、この人にお母さんと喧嘩したことを言ったのだろうか。
「お母さんの分も買ってくれるの?」
「もちろんだよ。そこの路地裏にお金を置いてきたんだ。とってきてくれないか」
「わかったよ おじさん」
僕らはおじさんが指を指した路地裏に向かった。
夜の路地裏は暗く、明かりもないのでお金がどこにあるかなんてわからない。
僕らは手当たり次第探ってみたが、それらしきものは手に当たらない。
「おじさん、なにもないよ。どこ?」
エールが後ろを振り向いた瞬間、いきなり頭に強い衝撃を受けた。
エールは無造作に雪の積もった地面に倒れ込んだ。
それに気付いたネスが大きく叫んだ。
「エール!?」
エールに近寄ろうと立ち上がるが、ネスも頭を何者かに殴られ、エールに被さる様に倒れる。

僕らは 気絶した。


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