恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
バブル時代に学生だった学年主任は、何度もスキー場に通いその青春を謳歌したらしい。昔取った杵柄とばかりに、その華麗なシュプールを披露してくれていた。
……修学旅行を強引に「スキー」に決定したのは、多分自分が行きたかったからだと、同行した誰もが勘ぐった。
しかしゲレンデで、学年主任より誰よりも皆の目を引き付けたのは、やはり古庄だった。
古庄も例にもれず、他の教員たちと共にスキーを楽しみ、いい汗を流した。
スポーツは何でも無難にこなす古庄は、みっともなく転んでしまうこともなく、白銀の世界の中を見事なターンを見せながら滑り降りてくる。
「古庄せんせ――い!」
「キャ―――――っ!!」
その姿を見かけた女子生徒達から、名前を呼ばれたり、黄色い歓声を上げられたり。
ゴーグルで顔は半分隠されているというのに、ここでも古庄の存在は際立っていた。
そんな古庄を“落としたい”と息巻いている平沢は、修学旅行に同行できたのは好機とばかりに、きっかけさえあれば手を変え品を変え猛烈にアタックしていた。