恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
黙り込んで二人を見つめる皆の脳裏には、これまでの様々な出来事が思い出される。
いくら妊婦とはいえ、古庄の真琴に対する心配の仕方は、常軌を逸していた。
会議の場でも、二人は感情を隠すことなく、まるで犬も食わないような口論をした。
真琴は、古庄が帰って来ていないことに最初に気が付いて、一番心配し、憔悴するほど悲嘆にくれていた。
皆の中に存在していた、それらに対する違和感は、真琴と古庄が“夫婦”だったならば全て説明がつく。
二人は“仲のいい同僚”などではなく、心から愛し合っている夫婦だったのだと、普段の二人の様子を思い出し、全てのつじつまを合わせながら納得した。
けれども当の古庄は、そんな周りの思惑など知る由もなく、真琴を抱きしめてしまいたい衝動を、渾身の力を集めてぐっと我慢した。
これ以上真琴と接触すると、真琴の“結婚相手”が自分だということが露見してしまうと思ったからだ。
真琴の両腕を、元気づけるようにギュッと力を込めて握ってから、傍にいて静かに微笑んで見守ってくれている石井と、安心と驚きが入り混じった表情の平沢に目配せする。
そして、座るように促された椅子へと戻って、重いスキーブーツを脱いでスリッパに履き替えると、事の顛末を説明し始めた。