恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
携帯に登録されていない番号からの着信を不審に思いながら、古庄は通話ボタンを押した。
「はい、もしもし」
古庄が明快な応答をしても、電話の向こう側からは何も聞こえてこない。
いたずら電話かと思って、耳を離しかけた時、
「………先生……?」
か細い女の子の声が聞こえた。
その声はあまりにも小さ過ぎて、誰かも判別出来るものではなかったが、古庄は直感した。
「………森園か…?」
古庄の口からその名前を聞いた途端、真琴の鳩尾が何かにキュッと掴まれる。
「…どうした?」
真琴は自分に向けられた古庄の背中を見つめながら、古庄が佳音に優しく語りかけるのに、じっと耳をすませた。
「………うん。………うん。……それで?今は一人か?………何、言ってるんだ。バカことを言い出すんじゃない。……わかった……。今は家にいるんだな?……」
低く落ち着いた声で、古庄は慎重に受け答えをする。
そして、そこでとりあえず通話を終え、真琴へと向き直った。
真琴も今までの甘い感覚は忘れて、努めて学校にいる時と同じ表情で、古庄の顔を見つめた。
「……森園が、死んでしまいたい…って、泣きながら電話をしてきた…」