恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄は真琴の頬を両手ですくって上を向かせ、自分の笑顔を降り注いだ。
「たとえ君が俺をうっとうしがっても、ずっと傍にいる。お互い年を取って、どっちかが死んでしまうまで、ず―――っと、だ!」
そんな古庄の物言いに、真琴は目に涙を溜めたまま、クスッと笑った。
「泣いてる君もすごく可愛いけど、やっぱり笑ってるときが一番可愛いよ」
古庄は本心を言ったつもりだが、真琴は薄く浮かべた笑みを仏頂面に変えた。
「…からかうのはやめてください」
「からかってないよ。ホントのことだ」
「…もう…!」
少しふくれたように、それでいて恥ずかしそうに、真琴は古庄の腕からすり抜けていく。
いつもの調子の真琴に戻ったことに、古庄は安心して息を吐いた。
古庄にとって一番大事なことは、愛しい真琴が安らかでいてくれることだ。
しかし、今日のこの選択は佳音の心には大きな影を落とし、信頼関係にも亀裂を生じさせただろう。
今後、佳音がどんな行動に出てくるのか、古庄には計り知れなかったが、佳音のためにできる限りのことをしようと思った。
佳音の問題が解決できれば、真琴の心を煩わせることも少なくなる――。
真琴自身も、佳音の心が健全に成長していくことを、誰よりも望んでいるに違いなかった。