恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「毎日、朝起きて思うの。……学校行かなきゃ……って」
やっと佳音が口を開いてくれて、それが肯定的なものであることに、古庄はホッとして頷く。
「…うん」
「でも、先生の周りにはいつも誰かがいて…近寄れないし。学校にいて、あんなに大勢の人の中にいるのに寂しくて…、家で一人でいる方がずっといいって思うの…」
「…それで…?こうやって一人でいて、何をしている…?…寂しさはいっそう募るだろう?」
現実を衝かれて、佳音はグッと息を呑んだ。そして、うっすらと目に涙を浮かべ、古庄に答えた。
「……一人でいると、自分なんかこの世にいなくてもいいんじゃないかって思うの。弟の代わりに、私が死ねばよかったんだって……」
これは、佳音の中にずっと巣くって、彼女を病ませていた思考だった。
佳音のこの言葉は、古庄の胸に突き刺さった。
このどうしようもなく可哀想な佳音を、どうにかして救ってあげたいと思う。
けれども、古庄はもう、佳音の望んでいる言葉だけを投げかけるのはやめようと、決意していた。
たとえ佳音にとって辛いことでも、自分の中にある真実と誠意を表そうと思った。