そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
聞き覚えのある声に、下げていた頭をパッとあげた。

「…大谷、さん」

「あんまり遅いから、見に来た」

「・・・・」

その言葉に、一気に脱力感が襲い、その場にしゃがみ込む。

修は驚いて、私のようにしゃがみ込み、顔を覗いた。


「おい、どうした?」

「…安心したら、気が抜けちゃって」

「・・・?」

意味が分からない修は首を傾げている。

そんな修の顔が可愛く見えて、クスッと笑ってしまった。


「夜のオフィスとか、廊下って…なんだか気味悪いじゃないですか」

そう言って苦笑いすると、やっと合点が言ったのか、

修は納得した顔をした。


・・・やっぱり、可愛いな。なんて。


「怖がりか」

「…そうですよ、悪いですか?」

「…いや、ほら、帰るぞ」

そう言ってスッと立ち上がった修は、

相変わらずしゃがみ込んだままの私に手を差し伸べた。

私はその手をそっと掴むと、修は私の手を引っ張った。

・・・でもすぐにその手は離された。
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