偽装シンデレラ~キスの続きはオフィスの外で~
「待てよ。ここまで来て…往生際が悪いぞ。奈那子」

稜真さんも立ち上がって私の右手首を掴んで、逃走を阻止する。

「痛い…」

稜真さんはそのまま私を逃すまいと凄い勢いで自分の腕に寄せた。

「稜真…さん」

「他に誰が居るんだ?奈那子」

背中に回された両手に力を込める。心臓の鼓動、緊張感、良心の呵責、色んな思いが心の中で堂々巡りを繰り返し、眩暈を起こした。

目の前の稜真さんに支えれるような形で辛うじて立っている状態。

「もう逃げない?」

「それは・・・」

「まだ…逃げようと思ってるの?」

稜真さんのアーモンド形の瞳が困惑している。

彼は軽く息を吐き、私の唇にキスを落とした。

強引に舌を絡められ、彼の落とす濃厚なディープキスに気を失いそう。

唇が離れるとどちらのものともわからない蜜が引き合った。

稜真さんは陶然とする私を安心したように見つめる。

「お前を止めるには濃厚なキスが効果的だな」

「おいおい…二人の世界に浸るなよ」

バリトンの声が響く。声のする方向を見れば拓真さんが冷やかすような視線で私達を見ていた。
拓真さんの背後には純名さんと小陽さんが唖然と突っ立っていた。

「これにはワケが・・・」

稜真さんは困ったように後ろ髪を掻いた。





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